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『雪刃』加筆修正

2014-12-16 01:01

『雪刃』の食事描写を書き直しました。

『雪刃』を書いた当時はこの世界の食文化については大雑把にしか決めてませんでしたので、『偽装の結婚』を書くにあたって詰めた設定を反映させました。

 なんだか後付け設定が割とありますが、あのガンダムだって後付け設定満載なんだからいいんだよ! 的な、開き直りがあったりなかったり。

 それから冒頭を少し書き足しました。

 ストーリーに変更はありません。

 

『偽装の結婚』第二部第七章は、今のところ27,000字ほど書き進んでます。

 

 以下、『雪刃』の大幅書き直し部分です。「第十三章 覚悟」です。

 

 ヨルスの館に集まると、まず(よろい)を脱いだ。それから軽い食事を()った。

 (めん)である。それもごく簡単に調理されたものだった。

 ローゼンディアの食文化は非常に豊かであり、その内容は多岐に(わた)るが、ここイオルテス地方では麺が一般的な主食なのである。

 ただし騎乗でも片手で食べられるように具材を挟んだパンや、肉や煮野菜などの餡を詰め、蒸し上げた饅頭(モーロ)というものもある。

 尚、西方レメンテム帝国では主食はパン、または(かゆ)である。更にその辺境で暮らすヴァルゲン人は肉を主食としていると聞く。

 しかしローゼンディア人はと言うと一定しないのだ。

 各地方によって色々なものを食べ、食文化を発達させている。

 ここでも豊かなるローゼンディアという常套句が成り立つわけであった。

 器に入っている麺は温かい湯気を上げていた。温麺と呼ばれるものであり、味を付けた汁の中に麺を浸すのである。

 この味付けの汁にも様々なものがあり、麺の方にも太さや形だけでなく、風味付けの有る無しなどの様々な違いがある。

 つまりは一口に麺と言っても実に多様な種類があるのだが、今出てきた麺は一般的なパリエと呼ばれる味なし素打のものであり、汁は塩味であった。

 もっとも料理人もパリエだけではさすがに見映えが悪いと感じたらしく、ビエーロと呼ばれる豚肉の燻製と、(いろど)りと香料を兼ねた香草が入ってはいたが、いまいちの感は(ぬぐ)いきれなかった。

 しかし、あまり重い物を食べるわけにはいかない。敵の襲撃を前提しているのである。

 こんな時、レメンテム人ならば魚醤(ぎょしょう)で味付けした(かゆ)でも掻き込むのであろうが、ローゼンディア人、それもデルギリアの人間ならば、このぐらいが妥当(だとう)だろう。

 蜂蜜を溶かした紅トラナ茶を飲みながら、皆で静かに食事を摂った。

 トラナ茶はローゼンディアでは一般的に飲まれるお茶であり、いくつかの種類があるが、紅トラナ茶は蜂蜜や砂糖、牛乳などを加えて飲む事が多い。

 黙々と麺を食べる。(さじ)を使いながら丁寧に麺を受け、熱い汁を胃に流し込む。腹の中に温かさが、力が満ちてくるのを感じた。

 それとなく辺りの様子に目を走らせると、皆、浮かない様子で麺を口に運んでいるのが見えた。

 戦いが終わったのに解散もさせず、再びこのように集まっている時点で、誰もが嫌な予感を抱いているのだろう。

 その予感は正しい。そしてその正しさを言葉にして発するのが自分の役目だとグレシオスは心得ていたし、覚悟していた。

「――皆そのままで聞いてくれ……」

 再びジャグルが攻めてくるかもしれぬと告げると、村人の間に驚きと苦悶(くもん)の空気が拡がった。頭を抱えて(うめ)き声を上げる者さえあった。

 

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