伝説の敵

第二章 第九節

 なんという(さいわ)いだろう。

 クリステルが、ブランドシェに居る。

 それも、己が警護任務に()いているところに、セドリックが幽閉されている邸に、毎日やってくる。

 これが幸なのか不幸なのかは判断が難しいところであった。

 己は任務中である。しかも己にとって、バルドール家にとって、重大な任務中である。

 彼女の滞在先を訪ねるわけにはゆかぬし、ましてやあちらからやってきたところを捕まえて話し掛けるなど、(もっ)ての(ほか)である。

 だが己としては彼女の顔を見られるだけでも充分ではあった。

 この配置替えで当分彼女を見ることは(かな)わぬに違いないと思っていたから、それこそ降って湧いたような幸いであった。

 ところが手放しでは喜べなかった。

 彼女は常に、あの男を、イーヴを、引き連れてやってくるのだ。

 その様子からして、彼はどうやらギュベール家の食客(しょっきゃく)であるらしいが、彼が何者なのか、結局聞きそびれたままだった。

 また、気になることはそれだけではない。

 彼女はセドリックのお相手を務めているらしいのである。「お相手」ならすでに居るというのに。

 セドリックは身辺に少女を(はべ)らせている──

 それは最初、同僚たちの噂として聞いていた。()しからぬ噂であるが、てっきり彼らの無聊(ぶりょう)なのだと思っていた。こう言ってはなんだが、警護任務に派手さは無い。一日中ただひたすら立っているだけ、ということがほとんどである。何かしらの気晴らしも必要なのだ。

 しかし、実際この目で見てしまったら話は違ってくる。

 セドリックが住まう館は、王家の別邸からは少し離れて建てられていた。

 ごく小さなものである。セドリックひとりが生活するだけのものに見えた。

 外観からの推測ではあるが、通常の館のようにいくつもの部屋を列ねたものではなく、最低限必要な部屋だけを揃えたという感じであった。

 広間や客間が存在しないということはあるまいが、おそらくごく質素なものであろう。

 ここまで隔離する以上、無論、厨房やお付きの者たちの住まいなども別である。

 その者たちはやはり同じ敷地内にある専用の別棟から毎日通ってくる。

 こちらも王家の別邸に通常仕えている者たちからは隔離されているわけで、セドリックは王族の敷地内に生活しているといっても、事実上の幽閉である。

 それでも地下牢や、人里離れた辺境の塔に閉じこめられることを思えば、遥に優遇された状態であると言えよう。

 身辺警護の兵士らにしても、その小さな館を外から護るだけである。

 セドリックの姿を目にすることは無いし、彼が実際にどういう生活をしているかなど、まったく判らないし、判りようも無かった。判るのは館に出入りする人間と、館の窓辺の様子だけである。

 ある時、その窓辺に女の姿を見た。

 黒髪色白の、(はかな)げな美少女であった。

 ぴんと来た。あれが噂の美少女に違いない。貴人に侍っていても怪訝(おか)しくない様子であったし、何よりも、館に出入りする人間の中に、彼女の姿を見たことはなかった。

 聞くところに()れば、彼女はごくたまにしか、館からは出て来ないらしい。ほとんど四六時中、セドリックに侍っているというわけだ。

 しかし幽閉されている人間が、その身辺に女を侍らせるなど、あってもよいものなのだろうか。

 そのようなことが(まか)り通っていることが不自然に思えた。王がこのことを知らぬはずがない。それともこれは、セドリックに対する王のお目こぼしなのだろうか。

 お目こぼしであるならば、それはそれで良い。

 ……いや良くない。たとえ王族と言えど、人としての倫理、自己に課する規律というものがあろう。

 何よりそうして女を侍らせている男の元に、さらに彼女をお相手として派遣するというのがまったく()せない。

 セドリックの周囲に配置される人員は、すべて王自らがご選定になると聞いている。

 彼女もまた王命によって派遣されたに違いない。王のなさることであるし、王と彼女の父レイモンは公私共にごく親しく、彼女自身も王に可愛(かわい)がられているから、彼女の身に危険が及ぶようなことはないとの判断が、当然あるだろうとは思う。

 しかしそれでも、やはりどうにも不安がある。腹立たしくもある。

 同僚たちもおもしろくなさそうであった。それはそうだろう。セドリックは王位継承争いに敗れた男である。普通ならば王から死をたまわるか、牢獄に入れられているはずである。

 それが王の温情で生かされて、人並みの住まいに幽閉されるに(とど)まらず、美少女を侍らし、これまた美少女に相手をしてもらっているのである。

 セドリックに罪は無いと解ってはいる。

 あの王位継承争いも、本人にとっては意味すら解らなかったのかも知れない。

 それでもこうして敗北の結果を甘受しなくてはならないのだ。セドリックは犠牲者に過ぎない。

 どちらに味方するかに際してセドリックを選んだのも、父ジョルジュである。

 現状にしても、つまり責任はバルドール家にあるわけであって、セドリックには無い。

 だがそのことと、不幸な身の上であることと、本人の心根の持ちようは別の問題であろう。

 閉じ込められ鬱屈(うっくつ)しているからといって、その(なぐさ)みに乙女をあてがうというのは、明らかに間違っている。

 このままではいけない。

 周りにとっても、セドリック殿下御本人にとっても。

 何よりもクリステルの身が心配だ。

 セルジュは溜息(ためいき)を吐いた。まさかこんな形で、心に重荷を抱えることになろうとは……。

 ここに来るまでは考えてもいないことであった。

 無論緊張はしていたが、それはあくまでも重大な任務であるからであって、このような気持ちの問題とは無関係であるはずだった。

 ――もしや王はそこまでお解りの上で、私をお遣わしになられたのか。

 そのように勘繰(かんぐ)ってしまう。すべきでない勘繰りだと解ってはいるのだが。

 窓から風が吹き込んできた。

 先程(さきほど)から書を拡げてはいるが、まるで頭に入らない。手元の(あか)りのように心はゆらゆらと乱れ、時に小さく()ぜる。

 一応、セルジュは警護の監督者という位置付けである。

 最上位命令権を与えられているわけだが、ここは王家の別邸である。邸の警備をする兵たちは別にいて、そちらには別の監督役が配されている。そちらとの命令系統は完全に分断されているのだ。

 セドリックの封印という意味合いが濃い職務上、仕方の無いこととは思うが、不便であることは間違いない。これでは何か起きた時に、命令系統の混乱が生じないとも限らないではないか。

 それにセルジュはまだ赴任(ふにん)して日が浅い。現場のことがよく解っているとは言い難い。

 なるべく早く慣れようと努力してはいるが、実務については古参の兵に任せきりの印象がある。今だって兵は外を巡回しているというのに、自分は部屋で書を読んでいるのだ。

「やることなんかありはしませんや」

 実際に兵たちを取り(まと)めている男はそう言う。

「さすがに酒はまずいですが……まあ部屋でのんびりしていて下さい。立ちんぼやるのは俺たちだけで充分です」

 それでは兵に示しがつかないと言うと、

「それ、それですよ。若いお人は杓子定規(しゃくしじょうぎ)でいけねえ。隊長さんが(そば)にいるとかえって皆緊張するってもんです。まあここは俺たちに任せて、任期が切れるまではゆっくりしていてくださいや」

 背中を押すようにして、この部屋に案内された。御丁寧にワインまで用意してある。

「あとで何かツマミになるもん持って行かせますから」

 酒はまずいのではなかったのか? そう尋ねる前に背中で扉は閉まってしまった。

 やる気が出ないというのは確かにあるが、これはさすがに問題ではなかろうか。

 酒に手こそつけなかったものの、のんびり書など開いて(くつろ)いでいる。警護にあるまじき態度ではないか。

 (かつ)を入れねばならぬ。自分自身に。

 セルジュは書を閉じた。どうせ真面目に読んでいなかったので、(しおり)を挟むこともしなかった。

 兵には嫌がられるかも知れないが、気分転換も兼ねて様子を見に行こう。

 (しばら)くの間、部屋でおとなしくもしていたし、もういいだろう。

 セルジュは立ち上がり剣を取った。

 扉を開けて廊下に出ると同時に、妙な胸騒ぎを感じた。何かが怪訝(おか)しい。

「誰か居ないか!」

 誰何(すいか)しながら廊下を歩いた。右手には見事(みごと)な庭が拡がっているのだが、夜なのでその素晴らしさを(とら)えきることはできない。

 空には月が懸かり、篝火(かがりび)の中で所々が浮き上がって見えるだけだ。

 (もっと)も、これはこれで味のある景観だと言えるが――。

 篝火の数が足りないことに気づいた。

 セルジュは怪しんだ、と同時に耳に金属音が響いた。肌が(あわ)立った。

「隊長おっ!」

 先程セルジュを部屋に押し込めた兵が駆けてきた。

「敵襲です!」

 

   *

 

「お疲れなのではございませんか?」

 話題に区切りが付くと、セリーヌはそう言った。下がり気味の細い柳眉(りゅうび)をわずかに寄せて、気遣わしげな表情(かお)である。

 クリステルは困ったような笑みを浮かべた。

「そんな風にお見えになりますか?」

「ええ。日に日にお(やつ)れになっていらっしゃるような……。もしや、わたくしのお相手がご負担になっていらっしゃるのでは……」

「いいえ! そんなことはけしてございません。僭越(せんえつ)ではございますが、わたくし、姫様のお相手をとても楽しませていただいております」

「それならよろしいのですが……でも、今日はこんなに遅くまでお引き留めしてしまいましたわ」

「いえ、ご厚意に甘えて長居させていただいているのはこちらの方でございます」

 月明かりが射し込む、瀟洒(しょうしゃ)な部屋の中である。ふたりの少女が、テーブルを挟んで向かい合っていた。

 片や、月の光を集めたような金髪の、聡明な感じのする少女で、片や、闇の深淵(しんえん)(のぞ)き込むような黒髪の、(はかな)げな感じのする少女である。

 つまりは、クリステルとセドリックであった。

 セドリックを直接知る者たちは、彼女をセリーヌと呼んでいる。

 もちろん事情が事情であるから、今現在この場でその名を呼べる者は、ほとんどいない。お付きの侍女と、クリステルくらいのものである。

 クリステルが初めてセリーヌに拝謁(はいえつ)した時、セリーヌは随分(ずいぶん)(おび)えている様子だった。いや、そうとあからさまに(おもて)に出していたわけではないが、笑顔がとてもぎこちなかったのを憶えている。

 人見知りする性質(たち)というよりも、長い間人を(あざむ)いてきたために、過剰なほどに他人の目を気にするのが(くせ)になっているのかも知れない。また、他人と話すこともあまりなかったのかも知れない。秘密を隠蔽(いんぺい)するには、極力他人と関わらない方がよいに決まっている。

 それでもセリーヌが打ち解けるには、それほどの時間はかからなかった。クリステルの手にかかれば、いとも容易(たやす)いことであった。ふたりは今ではもう、ずっと前からの親友であるかのようだった。

 王のなさりように間違いは無かった。セリーヌの暮らしぶりは悪いものではなかった。

 小さく(つつ)ましやかな館ではあったが、セリーヌ自身の部屋は、王女のそれとして恥ずかしくないものを与えられている。食べ物も質素ではあるが、素材自体は上等なものである。幽閉の身の上ではあったが、幽閉されているのは「セドリック」であって「セリーヌ」ではないため、セリーヌとしての外出なら、たまにしているようである。

 そして驚いたことに、どうやら恋愛もしているようであった。セリーヌ自身がそうと口に出したわけではなかったが、そういうことは気配で判るものである。おそらくは外出先で逢瀬(おうせ)を重ねているのだろう。

 しかし、そのことに関しては一抹(いちまつ)の不安を禁じ得ない。その恋人は何者なのか、どこまで事情を知っているのか。こんなことは考えたくもないが、セリーヌが(だま)されている可能性も無いではないだろう。

 実に嫌な心配だと思う。セリーヌは幸せを受けるに足る娘だ。権力争いのために剥奪(はくだつ)された、女として当たり前の幸せを、今、徐徐(じょじょ)にではあるが取り戻しているところなのだ。これからの彼女は幸せであってよいはずなのだ。

 しかし――

「わたくし……幸せになれるのでしょうか」

 セリーヌは(うつ)ろな笑みを浮かべてそう言う。

「取り返しの付かないことというものが、あるとはお思いになりませんか?」

「……」

「幸せになれるとしても、幸せになってもよいものなのでしょうか」

「……」

 セリーヌは、母方の実家であるドゥブレー家の有様(ありさま)を、ひどく(なげ)いている。無論、口に出しては言わない。ドゥブレー家は王位を狙った逆賊ということになっているから、擁護(ようご)するようなことは言えないのだ。クリステルの前であっても、彼女は(わきま)えている。

 セリーヌの境遇の原因は、ドゥブレー家の野心にあったわけだが、それでもセリーヌにとっては肉親である。肉親だからと言って、血の(つな)がりがあるからと言って、必ずしも情の繋がりもあるとは限らぬものだろうが、ドゥブレー家と彼女の間にはあったのだろう。

 そのドゥブレー家は、今はもう潰滅(かいめつ)状態にある。領地は配置替えされ、公職からは追放された。その結果、外国に逃げ出した者もいれば、世を(はかな)んで自殺した者もいる。

 そうした家の有様を横目に見ながら、自分だけが幸せになどなれぬと、彼女は言いたいのだろう。

 いくら彼らが自業自得であっても、彼女自身は彼らの被害者でしかなくても、家族であったことには変わりない。仲間であったことには変わりない。

 彼女は彼らを(うら)んでよいはずだった。しかし、彼女はそうしなかった。それどころか、怨まれるのは自分の方だと思っている(ふし)がある。だから、幸せになりたいと思っていても、自分だけが幸せになるのが恐ろしいのかも知れない。

 彼女はそうした気持ちを一生引き()って生きていくのだろうか。この先どれほど喜びに満ちたことがあろうとも、そうした気持ちは影のように付き(まと)っていくのだろうか。

 そう思うとクリステルは、()()無い気持ちになる。

 王位継承争いが終わって日常が戻ってきても、それは表向きのものでしかない。一度起こってしまったことは、無かったことにはできない。何も無かったことにして、新たに一から始めることはできない。過去は必ず付き纏う。それは今現在を作り上げたものなのだから。

 それでも過去に縛られて立ち止まったままでいてよいとは思わない。結局、すべては未来に向かって動いている。残酷なまでに、否応も無く。ならば、前向きな方がいい。

「姫様は必ずお幸せになれます。どなたにもお(はばか)りになることも無く。陛下を……兄君を、お信じ下さい。兄君は決してあなた様を悪いようにはなさりません」

 セリーヌの青い瞳を真っ直ぐに見て、クリステルは力強くそう言った。

「……陛下を信じていらっしゃるのですね」

 寂しそうにセリーヌは(つぶや)いた。言葉に力が無い。

 クリステルにはセリーヌが何を思っているか解るような気がした。

 王を信じないというわけではないだろう。だが信じているというわけでもないのだ。

「もちろんでございます」

 クリステルはセリーヌの手を握り締めた。

「陛下は慈悲深いお方でございます。常に姫様のことをご心配でいらっしゃいます」

「ええ……そう信じておりますわ」

「近い内にここをお出になれましょう。まだはっきりとした時期は申せませんが、そのように手配しておいでであるというお話でございますから」

「それは本当でしょうか?」

 セリーヌの表情が動いた。驚きであろう。しかしその中に、わずかな希望の揺らめきがあるのをクリステルは見逃さなかった。

「本当でございます。ですからここをお出になれば、ご自由にお暮らしになることが(かな)いましょう。宮廷の方々は誰も姫様のご正体をお知りになりませんから、社交界への参加もできましょう。詩や音楽の会にご出席になることも、乗馬や舟遊びにご(きょう)じになることもおできになりましょう。遊びや芸術に親しまれるだけでなく、恋を楽しまれることだって、きっとおできになります」

 恋。おそらくセリーヌは今、想う人が居る。それは誰なのか。

 本来ならば穿鑿(せんさく)すべきではない。それは当人同士の()め事であるはずだ。

 しかしセリーヌの立場、王の立場を考えると、目を(つむ)って良い問題ではない。

「恋を……」

 セリーヌは、何かを夢想するように目を細めた。心ここにあらずといった様子である。

 クリステルは、そこへ()かさず斬り込んだ。

「恋をしておいでですね?」

 セリーヌは目を見開き、頬を朱に染めた。その青い瞳は動揺に揺れている。

 ――やはり。

 クリステルは確信を得た。

 そして、さらに踏み込もうとした時――

「あなたほどではございませんわ」

 不意を()く言葉だった。今度はクリステルが驚く番だった。まさか斬り返されるとは思っていなかった。

「わたくしよりもずっと重い、お(やつ)れになるほどの(やまい)(わずら)っていらっしゃるご様子」

 当てずっぽうだろうか? それとも気付かれるような素振りを見せてしまったのか?

 クリステルは驚いた。勘の良い少女だと感心するよりも、驚きと、そして羞恥(しゅうち)の方が大きかった。

 隠していた想いにいきなり触れられたのだから仕方ないとも言えるが、クリステルもまた頬を染めた。

 セリーヌは優しく微笑みながらも、問い詰めるような眼差しを向けてきた。これはもう、こちらから問い詰められるような状況ではない。

 クリステルは観念し、(おもむ)ろに口を開こうとした。

 その時――

 月が(かげ)った。

 いや、テラスに何者かが立ったのだ。

 テラスを振り返ると、月光を背にした黒い人影が、いくつも立っていた。

 (いぶか)しむ間もなく、静かに扉が開かれた。影たちが滑るように室内に入ってきた。

 彼らが黒かったのは逆光の所為(せい)ばかりではなかった。いずれも黒装束(くろしょうぞく)で覆面をしている。

 その内の一人がセリーヌに向かって片膝を着いた。

「お迎えに上がりました、御姫(おんひめ)

 若い男の声。自分よりもわずかに齢上(としうえ)といった程度だろうか。

 セリーヌは驚いている。だが(おび)えの色は無いようだ。

 つまり予想外の訪問者なのだろうが、知らぬ相手ではないということになる。

 推測するに、セリーヌの恋の相手はこの男ではないだろうか?

 クリステルは直感的にそう思った。

「……こちらの御婦人は?」

「クリステル・ギュベール嬢です。最近お友達になりましたのよ」

 嬉しそうに言うセリーヌの言葉に対して、男たちは驚きと、そして怒りの反応を見せた。

「ギュベール!」

奸賊(かんぞく)の娘か!」

 嫌われることには慣れている。いや慣れていたと言うべきか。父も自分も、かつては(あなど)られる立場にあったのだ。

 今は(うらや)まれる立場にあるが、当時から決めていたことがある。

 面と向かっての侮蔑(ぶべつ)には容赦しないということだ。

「父を奸賊と言いましたか――」

 静かな怒りを()めてクリステルは言った。

「取り消しなさい!」

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